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2015.08.09 Sun
ビジュアルは言語その13『美の分かれ目はどこにあるのか』

真夏日が続く真っ盛りの季節。
この時期、
夕暮れのミッドタウンは大変過ごしやすい。
六本木という喧騒から離れ、しかし、
都会の洗練された空気をしたっぷり含み、
みごとにライトアップされた緑道に囲まれ、
ミュージアムも隣接するという好立地。

このミッドタウン(ガレリア側)には、
各階に有名レストランが軒を連ね、
十分な広さの心地よいテラス席を
各店ごとに確保している。
そのような場にはやはり、
毎夜、着飾った男女が集う。


集う人たちの目的は様々で、
最も艶っぽいところは男女のデート。
かたや計算された清潔感が漂うテーブルでは合コン。
その対極に、
色気も(時に品も)感じさせないところで、
いっせいに名刺交換が始まる
異業種交流会のテーブルもある。

これだけ多様なグループが同じ店に集っても、
不思議なことにある種の「まとまり感」があるのは、
店側の気の利いた工夫なのである。


夕暮れのミッドタウンというと
「日常からちょっぴり抜け出したい空気感」
が売りではないだろうか。
仕事帰りに
『ちょっと高い金を払ってもいい』
と客に思わせる。
特別な場所に集った人間のそれぞれの思惑を
成功させるための場でもある。
そんな“場”に向かう人たちは、
それなりの期待感を持って集まっているのだ。

では、そんな
「ちょいと特別な場」
で圧倒的に浮いてしまう集団がいたとしたら………。
それはどうしても「ちょっと違う」人たちなのだ。
その日、遭遇した3人の女子は確実に、
何かしらの違和感を発してた。


“その理由”はすぐに判明したのだが、
先ずは状況をレポートをさせて頂きたい。

体型を完全にムシしてしまったコーディネイト、
ワイドでごつごつした骨格(全員がこの骨格)を
強調しているヘアとメイク。

例えると、
そういう趣味なのか?と分かるメンズが
赤文字系(ViVi)の「自分より2サイズ小さめの服」に
ムリして身体を突っこんだ感じ、だ。

そこに加えて、
重く膨らんだ前髪を左右にたらすヘアスタイル。
極めつけは、やはり厚めのファンデーション。
白いプラスチック縁の大きめサングラスを、
全員がカチューシャ代わりに使用する。

『なぜ、そこまで統一なのさ?』

と、見た者を思わずつぶやいてしまう力は圧倒的だ。
しかも、皆さま露出度高め。


そんなグループの隣に対照的な女子が1名。
静かに何かを待っている。


こんな特別な場によく馴染んでいる後ろ姿だ。

白い肌に吸いつくような
ティファニーブルーのラップドレスをまとい、
ベージュの大きめブレスレットがアクセント、
ミュールも品よくベージュで合わせられている。
小さく立体的な骨格にそった
美しいフォルムのショートヘア。
いま流行のロースキンベースメイク。

そんな女子が、
コツコツと心地よいヒールの音でどこかに向かう。

友だちの元へと足を運ぶ。
『ああ、彼女はあの子のツレだな』と一目でわかるのだ。
類は友を呼ぶ。
彼女の全てが(匂いまでも)軽やかすぎて、
今度は見た者の目を奪う。

店側はなぜこの対極なグループを隣同士にしたのだろう?
(店に責任はないか………)

ここで我々、
美のプロフェショナルは何を思うべきだろう。

考えて、
今回は「美の分かれ目」
いわゆるその、
酷なボーダラインはどこにあるのか?
目に見えないが圧倒的な
「境目」
を勇気を持って検証してみることにした。
人間性を否定するのではなく、
テクニカルに、専門性高く、できるだけ。


このボーダーラインを存在せしめているのは
「重量ではないだろうか?」
という仮説にいきつく。

例の3人は重いのだ。
メンズから遠慮される”重い女”はすでに有名だが、
「見た目の重さ」から連想される重量も、
重い女を増やす愚行につながらないだろうか?

我々、美のプロはもっと「重量」に気を配り、
お客をキレイにするべきである。

そしてもうひとつ、
重量とセットで捉えるべきは「角」だと言える。
なぜなら、重量を感じさせても美しく、
魅力的な女子が居るからだ。
要(かなめ)は

「重量×角張った女子」

を減らすことだ。

何かひとつでいいから「削ぐ」ことを
提案しなければならない。
重く角張った女子ほど、
やたら髪を切りたがらない傾向にもあるので
(のれん風前髪でほお骨を隠すため)
じゃあ、例えば「眉という毛」を軽くするとか。
ノーメイクに近いベースメイクを提案するとか。
前髪も(お許しが出れば)量だけ取るとか。

もう、何でも良いのである。
とにかく軽やかさ、あとは角を取る。
これを強要し続ければ、
いつかあなたは感謝されるのだから。


最後に、気になる例の女子はどうなったかを追記する。
日も完全に落ち、
ムーディタイムがやってくる。
店が用意した「ナマ歌(弾き語り)」が
歌いながら席をまわる時間だ。
多くの客たちは、
テーブルに歌い手が近づくと微笑みつつ賞賛を送り、
また自分たちの会話に戻る。
私のテーブルでも同様の作法で、
歌い手とコミュニケーションを取る。
(ちなみ残念ながら私はデートではない)

しかし、
3人のテーブルでは異なったコミュニケーションが行われた。

歌い手が突然行動をおこしたのだ。

確実に重そうな、
レザー(皮革)とビロードでできた
巨大なメキシカンハットを全員にかぶせだしたのだ。
後でググったが、
やはりその仕様のメキシカンハットはメンズ用。

きっと彼は
「足腰強そうな(ついでに酒も強い)このテーブルはオレの仲間だ」
と、彼女たちのビジュアルから、
そう読み取ったのだろう。
最後は肩を抱き合って歌うその光景に、
はたと
『ここは六本木だ』
ということを忘れてしまいそうになった。


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