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2014.06.19 Thu
編集者目線で再構築される美容室像
Bireki Magazine読者のみなさん、こんにちは。
コラムニスタのカズワタベです。

普段はフリーランスのプランナー/ディレクターとして、ウェブやクリエイティブに関わる様々なプロジェクトに携わっています。
月に一度更新される本コラムでは、私がこれからの時代の新しいヘアサロン運営の参考になるのでは?
と思った異業種の方にインタビューをさせていただいて、その手法を紐解いていきます。

第2回となる今回は編集者、ライターとして活躍なさっているモリジュンヤさんにお話を伺いました。
彼は私と同世代の編集者、ライターとして最も信頼している人間でもある古くからの友人です。
そんな彼の「編集力」は並々ならぬものがあります。
ヘアサロンと編集者。
普段あまり交わることがないであろうこの二者。
ヘアサロンについて編集者が本気で考えたらどうなるのか。
今回のインタビューは私自身なにが飛び出てくるのか楽しみなものでした。



(カズワタベ、以下、質問者同じ)
−−今日はよろしくお願いします!
 まず初めに普段どんな活動をしてらっしゃるのか、自己紹介をお願いします。


(モリジュンヤさん、以下回答者同じ)
「普段はいくつかのメディアやプロジェクトに関わりながら、編集や取材、執筆といった活動をしています。

ビジネス、デザイン、モノづくり、暮らし、都市、地域などいくつかのテーマで活動していて、例えばITベンチャーや起業家を紹介する『THE BRIDGE』という媒体やまちづくりやコミュニティについて紹介する『マチノコト』という媒体の編集などを行っています。

その他、社会を良くするグッドアイデアを紹介するウェブマガジン『greenz.jp』という媒体やアイウェアファッションを紹介する『OMG Press』という媒体などで執筆をしています。」


−−テーマが多岐に渡り、幅広い媒体で活動されていますよね。
今、名前は出ませんでしたが、モリジュンヤさんはこの『Bireki Magazine』のコラムニスタでもあります。
つまり今回はコラムニスタ同士でインタビューということです(笑)

ところで“ライター”は執筆を行う人、ということで理解されやすいかと思うんですが、“編集者”は一般的には理解されづらい職業なのではないかと思います。
具体的にどういう立ち位置の人を指す言葉なんでしょうか?


「コラムニスタ、まだ始まったばかりだったのでつい抜けちゃいましたね。フォローありがとうございます(笑)。

“編集者”という職業でイメージしやすいのは、書籍の編集だったり、雑誌の編集をしている方ではないかと思います。
企画したり、撮影したり、取材したり、執筆したり。人によってはデザインをやる、なんてこともあったりするので、仕事は多岐に渡ります。

ただ、各スキルにおいてはカメラマンやデザイナー、ライターなどそれぞれプロフェッショナルがいるため、各プロの方々に依頼して成果物を出してもらい、それらを組み合わせてアウトプットする仕事ではないかと考えています。
制作進行や、クリエイティブ・ディレクターなどの仕事に近いものがあるかもしれません。このあたりは媒体の規模によっても色々違いはあると思います」



−−ライターが書いた文章、カメラマンが撮った写真、その他、様々なプロの成果物を、その言葉の通り“集めて編む”仕事なわけですね。
編集者に求められるスキルや、物の考え方にはどういったものがありますか?


「そうですね。編集者に求められるスキルについては、色々な意見があると思いますが、私が考えていることは

『一つの物事をいろんな視点から見ること』 『物事を抽象化して考えること』『色んなものを観察すること』『日頃からアンテナの感度を良くしておくこと』『情報を届けたい相手のことを知ること』 『何かと何かをつなげること』

などが挙げられます」



−−言われみると確かに、編集者の方たちはこういった感覚を持っているように思えます。
しかし言うは易く行うは難しで、これらをすべて兼ね備えるには鍛錬が必要ですよね。
モリジュンヤさんはどのようにして、これらを得ていったんでしょうか?


「先ほど挙げたものは、ひとつひとつを見ていくと編集者でなくとも必要になるスキルだったり、習得している人がいるスキルだったりします。

スキル自体も集めて編んでいると言えるかもしれませんね。それぞれの項目に対しては書籍等も出ているので、ある程度の知識を得ることができます。
知識を入れることで磨くことができる部分もありますが、多くは日頃の生活を意識的にというか、自覚的にすることで、徐々に磨かれていくのではないかと。
先ほど挙げたようなことを、日常で意識するようにし、少しずつ習慣化していくことで身についてきたのだと思います」



−−日々の習慣付けが大事だと。これはどんなスキルを得るときでも同様ですよね。
そういった編集者の視点から見て、現在のヘアサロンもしくはスタイリストの抱えている問題点、ここをもっとこうしたら良いのではないかということはありますか?


「ヘアサロン・スタイリストが提供する価値を再定義してみることではないでしょうか。
“来店者のヘアカットをする”という面だけではないと思うんです。
前回、カズワタベさんが『factory』のオーナー西原典夫さんにインタビューした記事を読んだんですが、“カフェではなくスペースとして”運営しているとのコメン トがありましたよね。それに近い感覚だと思っているんです。

一旦、自分たちが提供できるモノやお客さんが求めているモノを客観視して、整理してみると、“来店者の髪を切る”以外にも色々な価値が見えてくると思うんです。
それが見えてくるとヘアサロンってもっと魅力的な空間にできるんじゃないかなと思っています」



−−“提供する価値を再定義”というのはわかりやすいですね。
もちろんヘアサロンである以上、最大の価値は髪を切るところにあるわけですが、実際はそれだけではなく「サロンの雰囲気が良い」「スタイリストとの会話が楽しい」「立地が良い」など、様々な価値がありますよね。
それらを一つ一つ見直していく、もしくは新しいものを取り入れていくことが大事ですし、そのときに編集的な視点が必要なのではないかと思います。
パッと思い付くもので構いませんので、例えばどんな価値を提供したらヘアサロンが魅力的になるか上げていただけませんか?


「美容のスペシャリストとしてお客さんの相談にのるカウンセラー的な要素だったり、美容アイテムのキュレーションをして発信するキュレーターとしての要素などは良いかもしれませんね。
スタイリストさんはファッションセンスがある方が多いと思うので、コーデのアドバイスをしたり、バーのマスターのように話を聴くスキルを高めても良いと思います。

いろんなお客さんの話を聴くことが多いと思うので、情報や意見の集積地であることを意識して、お客さんのニーズに合わせて情報を提供できないか考えてみるのも面白いと思います。

マッサージやヘッドスパを提供しているところも多いですが、ボディケア以外にも食事のことなどヘルスケア周辺まで領域を広げ、トータルビューティの要素を強めても面白いのではないかと思います。

それぞれを既に実践されているスタイリストの方やヘアサロンはあると思います。
すべてを網羅することは難しいと思うので、自分の個性や強みなどを把握した上で、どの領域を意識的に伸ばすのかを決めて磨いていくと、その価値がお客さんに伝わ りやすくなるのではとないかと」



−−ありがとうございます。 どれも効果がありそうなアイデアですが、特にヘアサロンを「情報や意見の集積地」と見るのは編集者の視点からでないと出てこない言葉だと思います。
それに自分で気づける人が増えたら、業界として面白くなっていくのではないでしょうか。
最後に、モリジュンヤさんの今後の活動の展望をお聞かせください。


「今って、いろんな領域で変化が起きている、もしくは起ころうとしているときなんです。

立体物を印刷できるプリンターやロボット技術、Google Glassのような身に付けるタイプのコンピュータなどが発明され、SFで描かれていたような世界が近づいているし、次々と便利なウェブサービスやスマートフォンのアプリが登場して人の生活に影響を及ぼしています。

日本全国の各地域では抱えている課題を解決するために様々な取り組みを行なっていたり、伝統工芸の技術を持つ人々は大量生産、大量消費の流れに抗いつつ、現代人の スタイルに合わせようと新たなブランドを生み出したりしています。

これらの変化を、領域を横断して追いかけ編集していくことで、“未来ってこんなふうなんだろうな”という未来に向かう潮流のようなものを伝えていけるようにしたい な、と思っています。」



−−では“未来のヘアサロン”が生まれたとしたら、それも取材対象ですよね?(笑)


「それはもちろん(笑)ぜひとも取材したいですね!」


−−モリジュンヤさんが取材したくなるような、未来のヘアサロン、僕もどんなものか気になります。本日はありがとうございました!



いかがでしたか?
美容業界ではなかなか聞き慣れないかもしれない「編集者」という職業。
そして、彼らが持つ「編集力」の根源はどこにあるのか、おぼろけにではありますが見えてきたのではないでしょうか。

特にモリジュンヤさんに挙げていただいた「一つの物事をいろんな視点から見ること」「物事を抽象化して考えること」「色んなものを観察すること」「日頃からアンテナの感度を良くしておくこと」「情報を届けたい相手のことを知ること」「何かと何かをつなげること」という編集者に必要な姿勢は、ヘアサロンの経営者の方はもちろん、個々のスタイリストのみなさんにも参考になる部分なのではないかと思います。

もちろんヘアサロン、スタイリストにとって技術的な向上は必要です。しかし、その上で編集的な視点を持ってお店の雰囲気や、システム、お客様へと提供する価値を更新していくことで、徐々に「料金や立地で比べられるだけではないヘアサロン」になっていくのではないでしょうか。

インタビュー終盤で出てきたモリジュンヤさんが取材したくなるような「未来のヘアサロン」。私自身まだイメージがつきませんが、この記事を読んだ方が将来作ってくれることを願ってやみません。