2018.01.29

『星屑のなかを雑念ワゴンで、ひとりっきり~終わりは次のはじまり…~』

 

|リサーチは思いもよらない方向へ

 

若き編集者・ライターの私に託された、

「新宿ラブホ特集」

 

 

取材前にリサーチとして、

歌舞伎町にある、

ラブホ乱立エリアへと足を踏み入れた。

ビデオカメラ片手に、

めぼしいラブホを隠し撮りしていると、

 

 

ググッと、

強い力で、腕をつかまれ、

見知らぬ男性に、

雑居ビルへと連れて行かれた……

 

(前回参照 『星屑のなかを雑念ワゴンで、ひとりっきり〜潜入捜査、絶体絶命の危機〜』

 )

 

 

 

|自分が何者かも語らない人に連れられて

 

ちょ、ちょ、ちょ、、、

 

 

「いいから来いよ」

 

 

と言うと、

雑居ビルのなかの、

ある事務所へと連れ込まれた。

 

 

薄々はわかっていた。

テレビでみたような、

明らかな服装ではなかったけど、

彼から溢れる空気は、

当初から、警戒していた、

すべき種類の人のそれだった。

 

 

 

「兄ちゃんさ、あそこで何してたの?」

 

 

今ならなんとても言い訳できるだろう。

 

しかし、

経験も浅い私には、

言葉が出てこない。

 

 

「てかさ、

それ録画になってるよな?」

 

 

|頭は回転ではない、頭は使え

 

まずい、、、、

 

 

ノールックボタンプッシュを

あれだけ練習したのに、

なぜ今使わなかったのか。

 

今でしょ?

 

 

 

あわあわ

 

 

声にならない言葉を吐き出していると、

いよいよ彼はいらだち始める。

 

 

「おい、

何してたんだって、

聞いてるんだろ??」

 

 

 

 

か、、、観光ズす

 

 

「………は?」

 

 

か、観光で、ぎましだぁ↑

 

 

………。

 

 

なぜだろう。

 

 

なぜか、咄嗟に東北弁が出てしまった。

 

 

 

|苦し紛れの東北弁は私を救ってくれるのか

 

私は東京生まれ、東京育ちだが、

私の母は福島県の会津。

 

高齢者は相当になまりがきつい。

 

 

実は、この3日前、

町で行われた「川さらい」に参加していた。

 

川さらいとは、

農業用水路にたまった、

ゴミや石を除去して、

スムーズな水の流れを

確保するための作業だ。

 

町を挙げての行事で、

今年の幹事であった母が、

骨折してしまったため、

代打で遣わされていたのだ。

 

 

参加している若者は私だけ。

他は60歳は超えている人ばかり。

掃除と打ち上げを含めて4時間。

その間で理解できた言葉は

 

 

 

 

「セブンイレブン」

 

 

だけだった。

 

 

やっと町にセブンイレブンができたのだ。

それは喜ばしい。

 

 

この3日後のことだったからか、

それとも私にスパイとしての素養があったのか、

なんとか逃げたいという一心からか……

咄嗟に会津のなまりが口をついた。

 

 

 

「あん?

お前、どこの出身だ?」

 

 

 

福島のぉ、

会津田島ってところですぅ

 

 

と精一杯のネイティブでがんばってみた。

なにせ、必死だ。

 

 

すると、

 

 

「おぉ、そっかぁ、

俺は青森なんだよ、

なんだよ、

そっか、そっか」

 

 

と勝手に何かに納得してくれた、

ようだ。

 

 

 

「お前さぁ、

あんなところウロウロするなよ。

しかもビデオカメラなんて持って。

やっぱさ、一応、確認しないとさ、

いけないんだよ、俺もさ。

あ、録画しっぱなしだぞ」

 

 

そう言うと、

私にお茶をすすめてきた。

 

 

会津のおじいちゃん、

会津のおばあちゃん、ありがとう、

そしてお茶をすする。

 

 

右手が勝手に、

ノールックで赤ボタンを押す。

 

 

遅いわ。

 

 

|窮地からの脱出、でも終わらない

 

そのまま、

何もなかったかのように、

私は恐怖の雑居ビルから解放された。

 

 

一様にリサーチはできた。

ビデオデータをもとに、記事を作成。

 

 

実際に記事として発売された。

 

 

―――

後日談。

実際の取材が始まった。

当然ながら再度、歌舞伎町の

あのラブホ街を行き来するのだが、

当然ながら、

彼のことも見かけた。

その度に、私はホテルからホテルへ、

スパイのように、

逃げ隠れすることとなる。

不倫政治家の気持ちが、

少し分かった青春の夏日。

――-

 

 

おわり。

 

 

 

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この記事を書いた人
石渡武臣
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